帰国子女出国中

帰国子女の問題は常に言葉です。日本語は難しいですから。あたしは帰国子女がわりかし多い中学に(カンニングで)入ったので、公立のように異端視される事はありませんでしたが、やっぱり足並みを揃えなきゃという眠っていた大和魂が蘇りました、あの時は。中1、4月、初めての英語の授業。先生は帰国子女にガンガン質問してきました。まあ、「ワッチョーネー?(What's your name?)」「ウェラーユーフロン?(Where are you from?)」なんて程度なんだけど。みんなちゃんと「キャナダ」とか「ランドゥン」とか言ってる。しかし、クラスの人たちは笑ってる!在国子女の方々は「帰国子女が正しい」とか「カッコイイ」とか負け意識を持ってたりしがちだったようですが、結局は笑った人数の多い方が勝ちなんです。あたしはそのとき「オースト・・・・リア」と語尾をハッキリ言わない事でその場を切り抜け、見事に日本の中学に溶け込む事ができたのでした。


そして中3。すっかり東京の嫌な子になったあたしはアメリカからの転校生(帰国子女)が「モッリークーの」とか「マイコーが」なんて言うのを「あいつのモトリークルーとかマイケルをあんな言い方するんだよ〜」とすっかり笑われる方から笑う方へと転身していました。この変わり身の早さこそが出世の秘けつです(出世はこれからだけど)。ちなみに本気で富岡以外のマイケルをマイコーと呼んだヒロコは「当時マイケルって日本語では言う事を知らなかった」とすっかり自分の過ちを認める日本人ギャルに成長(しかし英語教師)したのでした。

もう「子女(むすことむすめ。子供。:広辞苑)」と言われない歳になってますが、これと似た問題が起こりつつある気がしています。日本語の移り変わりは非常に激しいです。特に若者の話す言葉は。3年前の言葉がすでに「死語」だったりしてしまいます。そして新しい言葉がどんどん生まれます。こっちに長くいる人とと話すと、あたしが日常的に使う言葉が理解されなかったりします。それは主に松本人志などのお笑いの人がテレビで言って、皆も使うようになった言葉なのですが。例えば「あいつかなりヘタレだよね」とか言うと、10年くらいこっちに住んでる人は「ヘタレ」をあたしが作った言葉だと思ってしまって「ハハハー、ユキって面 白ーい」ってなことになってしまって、あたしはどうも申し訳ない気持ちになってしまいます。

野沢直子は、今サンフランシスコに住んでいるらしいです。多分あたしの憶測では同じ地区に住んでいるのではと勝手に思ってるので会ったら是非友だちになろうとおもってるのですが。関係ないけど、誰かが「おかしな人はニューヨークとサンフランシスコに集まる」と言っていました。野沢直子とか、ガブ(有森のだんな)とかでしょうか。その野沢直子が3年くらい前に『出稼ぎ』とか言って6年振りに日本のテレビにバンバン出ていました。その時びっくりしたのが、彼女の言語感覚が6年前(当時)で完全にストップしていたことです。彼女はことある毎に「ゲロゲロー」と言っていました。ギャグで「ヤング」とか「シティーボーイ」とかいう言葉をわざと使う人がいますが、彼女の「ゲロゲロー」は6年前の正しい使い方で使われていたのです。

こっちの留学生は大体「日本で起こってる事はどうでもいい」という人と「アメリカには住んでるけど日本の事にもちゃんと乗り遅れないでいたい!」と思ってる人と2種類に分けられる感じがします。前者は恋人が外国人だったり、好きなタイプは?と聞かれてハリウッドの俳優を挙げたりする人です。日本の若者の身のこなしの素早さについていけなくなって脱落した若年寄り風。若いのに「最近の若いもんは」とか言ったりします。後者は、卒業したら即効日本に帰る、と決めていたり週に1度は日本食レストランに行ったり、キノクニヤで女性セブンを立ち読みしたり、日本のバラエティ番組をレンタルしてきたり、日本に「流行ってる曲を編集した」テープ(またはMD)をこまめに送ってくれる優しい友だちがいたり。こういう人はよく日本人同士でカラオケに行ったりして、楽しみ方もどっか日本の若者風。

あたしはというと、ここでもなんだか中途半端。「どーでもいい」と言い切れるほどの潔さはナイ。インターネットの芸能ニュースと地上波のNHKニュースはチェック。3ヶ月遅れの『HEY!3』も見る。キノクニヤで、女性セブンの表紙だけチラっと見る。しかし、 金を払ってまでバラエティ番組をレンタルしてくるものしゃくに触る(というか、ハマるのが怖い)。テープを送ってくれる友だちもいない。レストランには行かないけど、やっぱ御飯は炊いちゃう(マメやパンを主食に肉は食えない)。東京にも、帰りたいような帰りたくないような・・・。あたしの中では中1の時に「オースト・・・ラ」と言った時の葛藤に似ています。もしあたしがこのどっちかのタイプの留学生だったら中1の時も「オーストレイリア」ってハッキリ言えよ!!と思っていた事でしょう。

でも、あたしは3年前のアルタの会場の皆が感じた「トホホ」が忘れられなくて、きっとそれが怖くてこんな半端モンなんです。

(99/11/16)

BACK