心配ごと
あたしは、よく人に「楽天家」などと遠回しにバカの烙印を押されることが多いのですが、あたしにもまったく心配事がないわけではありません。ただ、あたしの心配事って、たいていは「よけいな心配」であることが多い。
幼少の頃は、オバケよりも雷よりも「溶岩」が怖くてたまりませんでした。ほとんどぼんやりとした記憶なんだけど、どっかの火山の火口に連れて行かれて、そこでいかに溶岩の威力がすごいものかすごい迫力で説明されたのです。それ以来東京に帰っても寝る前に寝てる間に富士山が噴火して溶岩が流れてきて飲み込まれたらどうしよう。おとうさんとおかあさんとおにいちゃんに置いてかれたらどうしよう。走るスピードよりも溶岩のスピードの方が早かったらどうしよう。海まで逃げたらその先どうしよう・・・と眠れなくなるばかりでした。また、嘘をついたら地獄に落ちると聞いた時も、もうすでにたんまり嘘をつきまくっていたあたしはどうしようと真剣に悩みました。どんなに辛くてももう死んでるから死ねないんだ。ギャーって言いたくてもエンマ様に舌を抜かれてるから言えないんだ・・・と泣きじゃくりました。その他にもエスカレーターの枠の黄色い部分は踏んではいけないと教わって以来、もし踏んでしまったらどうしよう。胃次元の世界かどっかに落っこちて戻って来れなかったらどうしよう・・・その他にも親にもし津波が来たら何を持って逃げようか、と相談を持ちかけましたが、あまり相手にされなかった記憶があります。
小学校に上がると、異常な自意識とマスメディアへの憧れにより、心配事がとんでもない方向へいってしまいました。ベストテンであたしの唄が聖子ちゃんより上位だったらどうしよう。明菜にいじめられはしないか。紅白のあの階段を上手に降りることはできるだろうか。「アイドルになれなかったらどうしよう」じゃなくて、心配事の中ではすでにアイドルになってるところが恐ろしいですねえ。
もうちょっと大きくなってからも、夜ヒットで初恋の人が御対面とかいってすごいブサイクになってたらどうしよう。竹下通りなんて歩いてスカウトされたらどうしよう。現実は竹下通りで合ったのは集英社のアンケートと、キャッチセールスとAVのスカウトくらいだけど。(余談:大学時代に竹下通りで『つやつやナイト』にでてみない?と聞かれて「そんなの知らない」とAV扱いしたらそのスカウトマンは「え!!つやつやナイト知らないの?!」とオーバーに驚いてしかもすごく気を悪くしていました。後日『つやつやナイト』が実在するテレビ番組(千葉テレビ)だと知って少しだけ嬉しかった。)
中学生になっても、ますます心配事は増えて当時好きだったINGRY☆MONGRYの握手会に行って一目惚れされちゃったらどうしよう。芸能人の彼女になってファンの子に嫌がらせされたらどうしよう。写真週刊誌に撮られたらどうしようと、とどまるところを知りませんでした。
大人になってかなり現実に目を向けられるようになってからも、よけいな心配は本当によけいなところで顔を出し、懸賞で車が当たったらどうしよう、駐車場がないから5等の音楽ギフト券にしておこう。飛行機が落ちて、自分だけ無傷で生き残ったらどうしよう。3億円拾ったらどうしよう。
こうやって順を追って書いてみるとあたしもだいぶ成長したなあと思うけど、このエッセイも「もし有名人になってエッセイを依頼された時のための練習」と思うと何の進歩もない自分が心配になってしまいます。
(99/8/16)