稲川淳二の季節

しつこい様だけれども、サンフランシスコの夏は寒いです。たまにくらくらめまいがするほど暑い日もありますが、そんな日が3日も続けば後の10日は寒い、と言ったところでしょうか。
あたしは別に暑いの大好き常夏娘ーな訳でもなく、むしろ暑いのは嫌いでなけなしのバイトの給料でローンを組んで自室にクーラーを購入したくらい暑いのイヤンだったんですが、こうも「夏」を感じないとチト淋しいのです。「・・・もう、喧嘩する相手がいないと拍子抜けしちゃうじゃないの・・・」と姑の葬式でつぶやく嫁の気持ちなのです。知らないけど。

チューブが夏に稼ぐと言われて久しいけれども、稲川淳二も夏に稼ぐな。桜金造はオババの見る番組なんかでも見るけど、稲川淳二って怖い話しをする前はただのコメディアン?稲川淳二は話が下手(吃音&早口)なので桜金造に 怖さでは負けているけど(あたしの中では)あれだけ沢山の怖い話を記憶している、っていう点ではスゴイ芸だと思います。地味な芸だけど。林家ぺーの誕生日暗記とか。
あたしも昔怖い話となると持ちネタが何話かあったけど、もうあんまり覚えてないもんなあ。 夏と言えば怖い話、ということになっていて、「小学5年生」8月号の付録には別 冊で怖い話集の小冊子が入ってたりしたけど、本当にそんなことで涼しくなるのか?というのがあたしの幼少の頃からの疑問です。キンキンに寒い雪のちらつく夜にいくらお岩が皿を数えたって誰も見に行かないか。そう言えばバンドブーム時代の『ポップティーン』で「イタコにシドを呼んでもらう!」って企画も夏だったな。バカバカしくて面 白かったけど。

先日友人に「なんで数珠してんの?」って聞かれてとっさに「おばけが怖いから」って答えてしまいました。嘘なんですけど。でもおばけが怖いのは本当なんで、まあいっかと思って。あたしは怖がりなくせに怖い話とか怖い本とか怖い漫画とか怖い映画とか見たりするので余計怖い。小学生の時『グレムリン』で眠れなくなったくらいだし。想像力が豊かなのも怖がりの一因だけど、何よりあたしはほぼ毎晩、総天然色の夢を見るので殺されたり、追いかけられたり、呪われたり、経験豊かな訳です。自分でもおばけが怖いのか殺人鬼が怖いのか、要するに自分に危害が加えられるのがヤってだけなんスけど。

あたしはクラスに必ず一人はいる「自称・霊感少女」が嫌いです。修学旅行なんかで旅館の部屋に入るなり「あ、ここ感じる」などと「おめえAVか?」と思うようなことを口走ったりして、消灯後の人気者になるやつ。
ある夏休み、友達8人くらいで大宮ちゃんちに泊まったときの事です。お約束のように怖い話を輪になってしていました。あたしも自慢の怖い話ネタを披露して皆を怖がらせたり、人の話で怖がったりしていました。その中にも幸か不幸か、自称・霊感少女えいちゃんがいて、突然「大宮ちゃんの後ろに霊がいる」とかホザき出して、あたしを興ざめさせたのです。大宮ちゃんは泣きながら数珠をゴネゴネし出すし、あたしは、あーもーどーでもいーよ、って感じだったのですが、皆けっこうマジで怖がり出して、そしたらえいちゃん、止せばいいのにどこで習ったのか御払を始めちゃって「エイヤー!!」とか叫んで大宮ちゃんの背中をバシバシ叩き始めて悦に入ってる御様子。
初めは怖がってた皆も段々「正気の沙汰じゃねえな」と笑いをこらえて傍観するしかなかったのです。 後で大宮ちゃんに聞いたところ、本当に憑かれたかどうかは覚えてないけど叩かれて痛くておばけどころじゃなくなって涙が止まらなかったから、もし、憑かれてたんだとしたら御払されたことになるのかなあ・・・なんて事を言ってましたが。

あたしはえいちゃんに限らずこういう自称・霊感少女は目立ちたがり屋で負けず嫌いなんだなあと今は思います。特に十代の少女って言うのは人より上に立ちたいと思っているもの。でも実際人の上に立てる人ってのはそう多くないです。「努力」「容姿」「才能」を必要としない「お化け見えちゃうもんね」は、言ったもん勝ちです。「なんかあ、あたし人とは違うのよね」って。

あたしはおばけを見たこともないし、霊感もないし、ましてや御払もできないけど、おばけが怖い。うちのアパートの地下のゴミ捨て場なんて、おばけが化けて出るにはうってつけの地下で。、もしくは殺人鬼が獲物を待ち構えるのにうってつけの地下で。もしくは死体を隠すのにうってつけの地下で。どうやら「怖い話で涼しくなる論」というのはアメリカでもそうらしく、怖い映画がどんどん封切になってます。観たいなー、怖そうだなー、観ちゃうんだろーなー。そしてこの夏も、自分の想像力と溜まるゴミとの戦いなのでした。

(2000.07.22)

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